ニューズレター
LSF会員に年4回配布している会報のバックナンバー
文集「ふぉーらむ」
年1回刊行しているLSF寄稿文集
図書館サポートフォーラム賞
LSF表彰の内容
イベントの記録
LSF関係イベントの記録
アルバム集
LSF関係イベントのスナップ写真集
図書館サポートフォーラム表彰事業について
図書館サポートフォーラムは1996年に発足しました。主に図書館を卒業された方や図書館から他の職種に転出された有志の集まりです。図書館の経験を踏まえながら、図書館で頑張っている方々をサポートしよう、というのが会の主旨です。
図書館サポートフォーラム賞は、ユニークで社会的に意義のある各種図書館活動を表彰し、図書館活動の社会的広報に寄与することを目的として、以下のような方々の活動を顕彰し、勇気づけるために創設した賞です。対象としては、原則として「個人」としています。ただ、どうしても個人を特定することが難しい場合に限り、団体も表彰対象としています。
- 図書館等で目立たないながらも、着実に専門的な業績を上げて図書館等の活動に貢献された方
これまでの受賞例:特定分野の文献目録をコツコツ作成されてまとめあげた方、ユニークな索引手法を開発された方、レファレンスなどの活動でユニークな業績を挙げられた方 - 図書館についての草の根協力などで、海外と日本の架け橋となっておられる方
これまでの受賞例:途上国での図書館作りに努力された方、途上国での読書推進活動に尽力された方、日本の出版物の海外への提供の改善に努力された方 - ともすれば目立たない図書館等の活動の意義を、自ら体現し、また社会に対して訴える活動をされた方
これまでの受賞例:新聞紙上などで図書館、文書館などの社会的意義を発表された方、図書館活動の社会的認知に貢献された方、図書の保存に尽力された方
会員に限らず、どなたでも、推薦人になることが可能です。以下募集要項に基づき、推薦を受け付けております。ぜひ、みなさまの積極的なご推薦をお待ちしています(代表幹事 山ア久道)。
- 推薦対象は、原則「個人」とします。どうしても個人を特定できない場合のみ、団体を推薦することも可とします(団体の活動の場合は代表の方をご推薦ください)。
- 締め切りに遅れて届いたものや、推薦状に記載不足があるもの(「補足資料」「連絡先」etc.)は受け付けを無効とします。
- ご推薦方法
以下募集要項を、よくお読みいただき、いずれかの方法でご推薦下さい(※郵送でも募集受け付けいたしますが、選考作業の煩雑化を避けるため、なるべくメールかWebフォームでお送りいただければ幸いです)。
>>★募集要項〔第24回 図書館サポートフォーラム賞〕
(1)補足資料〔審査の参考となる資料(記事など)〕を、添付ファイルでご回答されたい場合は、以下「推薦状」(PDF形式)と合わせ、事務局宛てにメールでお送りください。
>>(1) 推薦状(PDF形式)
(2)補足資料〔審査の参考となる資料(記事など)〕を、ネット上の該当URLでご回答できる場合は、以下「推薦状入力フォーム(Googleフォーム)」をお使い下さい。
>>(2) 推薦状入力フォーム(Googleフォーム)
第24回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2024/5/1 授賞予定)
- 石原 弘子 氏(多言語絵本の会 RAINBOW 代表)
- 石原弘子氏は、多言語絵本の会RAINBOWの代表として、2006年から東京都目黒区を拠点に在住外国人とともに「外国につながる子どもの母語保持」と「日本語で育つ子どもの外国語への関心拡大」を目的に掲げて、「多言語よみきかせ」や「多言語電子絵本制作」を行ってきている。障害者支援であるマルチメディア・デイジーを使用して制作された「外国語と日本語のバイリンガル電子絵本」は、バリアフリー図書の先駆である。国籍・言語を越え、子どもたち個々の母語への親しみを守り育むという例は他に見出しがたく、その功績は、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 礒井 純充 氏(一般社団法人まちライブラリー 代表理事)
- 礒井純充氏は、2008年大阪天満橋駅近くのビルの一室で自身の蔵書1,500冊で「まちライブラリー」を開始し、「まち」で働き、生活する人々が、「まち」を自分の目線で活き活きとさせるための塾「まち塾」と「まちライブラリー」(学びあいの場)を提唱実践する過程で、ひたすらミクロにこだわって、日本におけるパブリックなライブラリーの実態とイメージに大きな刺激を与えるとともに、その戦後日本の民主的図書館像への果敢な揺さぶりは、著書『「まちライブラリー」の研究―「個」が主役になれる社会的資本づくり』(みすず書房、2024)にまとめ、その功績は、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 眞野 節雄 氏(東京都立中央図書館 資料保全専門員)
- 眞野節雄氏は、1976年東京都立図書館の司書としての職務の傍ら、自主的に資料補修製本等の専門技術を自学自習され、2000年代にはJLAの資料保存委員会に参加しつつ、本務館である都立中央図書館の資料保存室での資料保存業務に専念され、その成果を『防ぐ技術・治す技術―紙資料保存マニュアル』(共著、2005)および『図書館資料の保存と修理―その基本的な考え方と手法: 眞野節雄講義録』(2023)など多くの文献にまとめられており、東日本大震災はじめ多くの災害に見舞われる中、MLAにおける、「防ぐ技術・治す技術」のたゆまぬ改良と継承の意識継続の必要性を強く示し、その功績は、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
第23回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2022/11/2 授賞式)
- 加藤 信哉 氏(元・国際教養大学 特任教授・図書館長)
- 加藤信哉氏は、図書館短期大学を卒業後、筑波大学図書館を皮切りに東京・名古屋・熊本・山形・東北・秋田と多くの国立大学図書館で要職を歴任されて、その間、海外の先端的図書館システムの変革の模様をいち早く咀嚼理解され、国内大学図書館界に紹介するとともにその実践化を主導された。2016年からは国際教養大学の特任教授かつ図書館長に就任、その名の通り多くの海外留学生を迎えて英語を基本授業語にする同大学の特色に資する図書館経営を実現するとともに、紙とデジタルの両資料をシームレスに繋ぐハイブリッド・ライブラリーを構築するなど、その先駆的功績は、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 小出 いずみ 氏(元・(公財)渋沢栄一記念財団主幹)
- 小出いずみ氏は、国際文化会館図書室長、渋沢栄一記念財団実業史研究情報センター長を歴任、並行して東京大学大学院人文社会系研究科で文化資源学を専攻、2020年博士論文が認められて博士号(文学)を取得、2022年『日米交流史の中の福田なをみ―「外国研究」とライブラリアン』(勉誠出版)により東京大学而立賞を受賞する。本書は国際文化会館図書室の基礎を築き日米で活躍した福田なをみ氏(1907-2007)の精緻極まる初の本格評伝であり、ライブラリアンの視点から戦前・戦中・戦後の日米交流史を再見するとともに、「外国研究」という異文化交渉の現象に独自の視点を表出するなど、その功績は、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 松崎 裕子 氏((株)アーカイブズ工房 代表)
- 松崎裕子氏は、名古屋大学大学院国際開発研究科に在学中にNARA:アメリカ国立公文書館に学んでアーカイブズの世界に触れた後、国文学研究資料館のアーカイブズ・カレッジに参加するなどの研鑽を積まれて、アーカイブズ工房を設立。特に企業アーカイブズを専門とされて、2008年からはICA:国際アーカイブズ評議会SBA:企業アーカイブズ部会や国内では企業史料協議会の理事を歴任されるなど、ビジネス・アーカイブズ、レコード・マネジメントの世界での先導者として多くの実践に加えて、著作、講演などを通じて、その事業を世に定着させることと若手後進への指導を重ねられてきたその功績は、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
第22回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2020/9/29 授賞式)
- 挨拶:山ア久道 氏(図書館サポートフォーラム代表幹事)
- 講評:水谷長志 氏(表彰委員会委員長)
- 矢野 陽子 氏(公益社団法人 全国市有物件災害共済会 防災専門図書館 司書・学芸員)
- 矢野陽子氏は防災専門図書館の司書・学芸員として、特に母体組織への図書館広報および防災・災害に関する調査機能の発現において、その図書館力を有効に活用し、東日本大震災、度重なる台風、そして新型コロナウィルスなど息つく間もなく押し寄せる災害に対峙するため、専門情報提供サービスを展開してきた。その結果、市民の防災意識の向上に貢献し、利用者数も劇的に増加させている。これらは、専門図書館の使命と進むべき姿をあざやかに示す活動であり、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 鳥海 恵司 氏((株)トッカータ 取締役)
- 鳥海恵司氏は、東海大学附属図書館職員時代から現在所属する(株)トッカータに至るまで、一貫して音楽資料のMARCレコード及び書誌・典拠データベースの構築とシステムの標準化に携わってきたことにより、音楽図書館や公共図書館、国立国会図書館などに貢献してきた。また、「音楽資料目録作成マニュアル」(1997年)、「音楽資料用件名標目表」(1998年)、「日本目録規則2018年版 典拠データ完全実例集」(2019年)など音楽資料目録作成の基本的ツールを提供してきた。近年ではRDA(Resource Description & Access)への動きを先取りし、音楽資料目録への適応とその普及のために積極的な活動を行い、図書館界に大きな影響を与えている。こうした半世紀にわたる貢献と功績は、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 林 淑姫(りん しゅくき) 氏(近代洋楽史研究者/旧日本近代音楽財団日本近代音楽館 主任司書)
- 林淑姫氏は、遠山音楽財団附属図書館、日本近代音楽館、音楽図書館協議会、及び和歌山県立図書館南葵音楽文庫等の活動を通して、明治期以降のわが国の音楽資料の収集、調査研究、目録作成に携わり、「山田耕筰作品資料目録」(遠山音楽財団附属図書館)、「日本の音楽コレクション」(音楽図書館協議会)、「近代日本刊行楽譜総合目録 洋楽編」(国立国会図書館DB)などの編纂・公開の中心的役割を担った。楽譜出版史・音楽図書館史の観点から研究を進め、明治期以降の洋楽史研究に新たな領域をひらいた。これら一連の活動によってわが国における音楽資料の全体像を明らかにした功績は、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
第21回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2019/4/23 授賞式)
- 挨拶:山ア久道 氏(図書館サポートフォーラム代表幹事)
- 講評:水谷長志 氏(表彰委員会委員長)
- 太田 浩市 氏(八王子市中央図書館 館長)
- 太田浩市氏は平成16年に八王子市が策定した「八王子市生涯読書活動推進計画」に図書館職員として深く関与され、また平成29年度には八王子市中央図書館長として、特に高齢者の図書館利用、ひいては生き甲斐の向上と高齢者自らの研究活動意欲の高まりを強く支援されました。その意図をもって、さらに八王子の郷土の誇りである「千人番所」にちなむ「八王子千人塾」の開設にも注力されたことは、生涯学習や地域振興の拠点としての公共図書館の使命と進むべき姿をあざやかに示す活動であり、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 川村敬一 氏(元・獨協医科大学図書館/同越谷病院図書室)
- 川村敬一氏は永く医学図書館員として業務を遂行されつつ、「分類」および「索引」という知識情報の組織化に必須の課題に取り組まれ、多くの関連専門誌に論考を発表されて、その知見を紹介されるだけでなく、当該領域の研究意義の理解促進に貢献された。また、ユネスコと国際情報ドキュメンテーション連盟が共同開発した変換言語BSO(Broad System of Ordering:広範配列体系)の事業に1995年から編集顧問として参与し、2011年にはBSOに関する英文書誌をアリゾナ大学から刊行された。内外における同氏の業績は、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
第20回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2018/4/23 授賞式)
- 挨拶:山ア久道 氏(図書館サポートフォーラム代表幹事)
- 講評:水谷長志 氏(表彰委員会委員長)
- 奥泉和久 氏(法政大学 非常勤講師/元・横浜女子短期大学図書館)
- 奥泉和久氏は長く大学図書館の現場において勤務されつつ、『近代日本公共図書館年表 1867〜2005』をはじめ多くの図書館史に関わる著作を公刊され、日本図書館文化史研究会の編集による『図書館人物事典』を先導して大きな成果を残して、近年の図書館史研究の活性化に大きく寄与した。中でも『図書館史の書き方・学び方』は、近々、韓国図書館協会から翻訳・刊行される予定があるなど、同研究領域において後進および海外への波及浸透をもたらすものであり、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 小山 騰 氏(元・ケンブリッジ大学図書館 日本部長)
- 小山騰氏は1985年から2015年までケンブリッジ大学図書館日本部長を務められた。同図書館が所蔵する膨大な日本語コレクションには、英国三大日本学者のサトウ、アストン、チェンバレンをはじめとする明治時代の外国人たちが持ち帰った数々の貴重書が残され、平田篤胤や本居宣長らの国学から始まる日本研究の歩みが所蔵されている。2017年出版の著書『ケンブリッジ大学図書館と近代日本研究の歩み―国学から日本学へ』は「国学⇒日本学⇒日本研究」という変遷について、サトウら三人にフォーカスして明示したことの意義は、今後の海外における「Japan Studies」の発展を考える上でも貴重な示唆となっており、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 公益財団法人大宅壮一文庫
- 著名な評論家であった大宅壮一氏の没後1971年に雑誌専門の個性ある公開専門図書館として半世紀の長きにわたり活動する私立図書館(現公益財団法人)の本文庫は、国立国会図書館や公共・大学図書館が収集対象として軽視してきた、きわめて多数の一般大衆誌に注目し、独自の索引・分類方式を開発して、とりわけ報道活動への大きな貢献を果たし、1982年にはその実績をもって第30回菊池寛賞を受賞している。近年の財政難にもクラウドファンディングを通じて体制を堅持しているが、あらためて図書館人が同文庫の価値を再評価することを期待し、図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 前園主計 氏(元・山梨英和大学教授)
- 前園主計氏は、1956年慶應義塾大学文学部図書館学科を卒業、同年4月(財)日本生産性本部に就職、1960年には米国コロンビア大学スクール・オブ・ライブラリー・サービスに留学、40余の米国専門図書館を訪問し、帰国後「アメリカと日本の専門図書館」『図書館雑誌』(1962年3月)を著した。以来半世紀を越えた旺盛な著述活動、専門図書館協議会、日本ドクメンテーション協会等での先駆的活動、青山学院女子短期大学ほかでの教育や啓蒙活動を通じて、日本の図書館界を先導されたことは余人をもって代え難く、まさに図書館サポートフォーラム賞特別賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
★図書館サポートフォーラム賞特別賞
第19回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2017/4/17 授賞式)
- 挨拶:山ア久道 氏(図書館サポートフォーラム代表幹事)
- 講評:水谷長志 氏(表彰委員会委員長)
- 銀鱗文庫
- 銀鱗文庫は東京都中央卸売市場「築地市場」の水産仲卸の文化団体「NPO法人築地魚市場銀鱗会」の前身、1951年に誕生した「築地魚市場銀鱗会」が創立10周年の記念事業として開館、5年前から一般への閲覧も始めた。当初は、市場の人の余暇や教養を高めるための図書が中心だったが、2010年より、市場ならではの専門的な図書館に方向転換。水産の統計や年鑑ほかの専門書、日本橋魚河岸や築地市場開場時などの印刷物など、「築地市場の存在証明」に類する資料収集にも精力を傾けており、平成28年度は、1950年代に始まる業界新聞のデジタル化を進めて、築地文化を未来へつなぐ活動を行っている。こうした資料を目的に、水産関係者のみならず、大学生ほか多くの研究者が訪れており、この貴重な文庫を生き残らせることもまた日本の、東京の文化指標を示すものであると言えるだろう。このユニークな公開専門図書館である「銀鱗文庫」の事業は、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センター
- 公益財団法人渋沢栄一記念財団情報資源センターは、昨年の2016年11月11日、『渋沢栄一伝記資料』全68巻のデジタル化プロジェクトにおいて、本編58巻のうち索引巻である第58巻を除く57巻、約4万ページをインターネットへ公開した。本伝記資料が日本近代史、経済史研究に資することは言うまでもないが、本資料の公開に当たって仕込まれた、データ構成、検索システム、ユーザー・インストラクションなどの多面的で周到かつ、合理・合目的な設計は、数多あるデジタルアーカイブの中でも秀逸さにおいて際立っている。以後の史資料の公開に際して、モデルとなる事例を構築された貴センターの本事業は、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 雪嶋宏一 氏(早稲田大学教育・総合科学学術院教授)
- 雪嶋宏一氏は1978年に早稲田大学に司書職として入職後、深井人詩氏の薫陶のもと、1995年の『本邦所在インキュナブラ目録』(IJL)を皮切りに、西洋書誌学、とりわけ揺籃期本について全国調査に基づいて研究を推し進め、日本における西洋書誌学のレベルを大きく向上させた。教職に転じた後は、16世紀印刷本にフィールドを広げ、ヴェネツィア印刷界の巨人アルド・マヌーツィオ、『万有書誌』のコンラート・ゲスナーなど書物史に登場する巨匠的人物の研究においても多彩な業績を築かれている。揺籃期本については、2004年にIJLを改訂増補するIncunabula in Japanese libraries(IJL2)を刊行している。これらの一連の研究は、日本の学術図書館における西洋貴重書の保存と継承に多大の功績をもたらすものであり、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 渡辺美好 氏(元国士舘大学図書館職員・元同大学非常勤講師)
- 図書館サポートフォーラム賞の受賞者の中には、これまで図書館員でありつつ書誌作成に本務以外の個人の時間を傾注して止まないbibliographer、書誌の人は少なくない。18回の手代木俊一氏はキリスト教礼拝音楽の、16回の太田泰弘氏は食文化の主題書誌において、14回の金沢幾子氏は福田徳三の、11回の大森一彦氏は寺田寅彦の個人書誌においての功績を評価してのものであったが、今回の渡辺美好氏も吉田松陰書誌に代表される個人書誌において大きな成果を挙げられた。特に個人書誌を「データによる伝記」と把え、対象人物像に迫り、その人間観、歴史観の理解を促す創意工夫のある書誌の作成は、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
第18回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2016/4/18 授賞式)
- 挨拶:山ア久道 氏(図書館サポートフォーラム代表幹事)
- 講評:水谷長志 氏(表彰委員会委員長)
- 埼玉県立久喜図書館
- 埼玉県立久喜図書館は国立国会図書館レファレンス協同データベースの最初期より参加し、県内の他の県立図書館と連携しながら多分野にわたるレファレンス事例を登録し続け、今日、自他ともに「日本一!」を誇る成果を提供している。数値的に見るならば、平成26年度末において、累積登録点数「25,962」、年間登録点数「1,277」、被参照件数「2,017,711」となっている。国立国会図書館のWebサイトで「データ総登録数15万件突破記念ページ」は平成27年7月に公開されているが、久喜図書館は実にその約17%超を担ってきたことになる。ちなみに平成27年3月時点の参加館は656館。埼玉県立久喜図書館のデータ被参照件数は、国立国会図書館を除き、平成20年度より8年連続全国一、累積登録点数は国立国会図書館に次ぎ、第2位である。このような実績を支えている理念は、埼玉県立図書館が重点目標の一つである課題解決支援機能の強化として県民の専門的な調査研究活動を支援するため、レファレンスサービスを推進するとしていることからも顕著である。以上に見られる継続的なレファレンス活動は県立図書館の使命を良く示しており図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 田川浩之 氏(金沢文圃閣 代表)
- 田川氏は北陸の古都金沢において古書店を営むとともに、書籍・出版・図書館・書誌・戦時期文化史資料などに関わって他にない出版活動を展開している。特色的な数例を挙げてみるならば、出版・書誌・書物メディア史の「文圃文献類従」には、田川氏ご自身の解題になる全2巻の『出版情報(戦時占領期出版関係史料集)』、天野敬太郎の「書誌の書誌」を完結せしめた『日本書誌の書誌−社会科学編(主題編3)』があり、「図書館学古典翻訳セレクション」には、ガブリエル・ノーデ『図書館設立のための助言(品切)』やピアス・バトラー『図書館学/印刷史著作集』ほかの藤野幸雄父子による訳書がある。ちなみに故藤野幸雄氏は2009年第11回の本賞を受賞されている。さらに2001年第3回本賞の受賞者である深井人詩氏の先導によって2001年以来の年刊書誌雑誌『文献探索人』、そして『文献探索人叢書』の刊行を続けられるなど、図書館員による書誌・年譜編纂の成果公開のための貴重な場を提供していることは、図書館員の自己研鑽へ向けての大きな支援、エールであると考えられる。この事業自体、図書館の外から図書館と図書館人をサポートする、まさに図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 手代木俊一 氏(立教大学立教学院史資料センター員/元・フェリス女学院大学附属図書館)
- 手代木氏は中央大学文学部哲学科を昭和48年に卒業され、神戸女学院大学、フェリス女学院大学、国際基督教大学、立教大学、明治学院大学など多くのキリスト教系私学の図書館あるいは研究資料センターに勤務され、勤務のかたわらキリスト教礼拝音楽学会の発起人の一人となり、機関誌『礼拝音楽研究』を創刊、日本近代史における讃美歌、聖歌史研究の書誌等基礎資料の編纂と研究成果の公表に多大な業績を残されている。特に2010年に刊行の『日本讃美歌・聖歌 研究書誌』は、明治初期に遡って同主題の網羅的書誌として類例のない業績である。例えば、冒頭にある書誌の一項、いささか長いのであるが、を紹介するならば、1880年(明治13年)、「Suggestions for a Japanese Rendering of the Psalms」Basil Hall Chamberlain, 『Transaction of Asiatic Society in Japan』Vol. 8, Pt.3(4月)[B. H. チェンバーレン 詩篇日本語訳への提言 及び試訳『讃美歌』<韻文訳詩篇>」手代木俊一訳『フェリス女学院大学音楽学部紀要』第1号(1995年1月)、『讃美歌・聖歌と日本の近代』(音楽之友社 1999年11月)に改定収録]というものであり、その精緻さ、時間の掛けようは容易に理解されるであろう。本書誌は音楽史のみならず日本近代史研究に広く活用され得るべきものと言えるのであり、長年にわたる研鑽は優れた図書館員の姿勢の典型として図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
第17回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2015/4/20 授賞式)
- 挨拶:山ア久道 氏(図書館サポートフォーラム代表幹事)
- 講評:水谷長志 氏(表彰委員会委員長)
- 漆原 宏 氏(写真家)
- 東京証券取引所勤務のかたわら東京総合写真専門学校を卒業、写真雑誌(株)研光社勤務の後、1974年にフリーカメラマンとなる。1983年に『地域に育つ暮らしの中の図書館』(ほるぷ出版)を出され、その後も日本図書館協会の『図書館雑誌』に「フォト・ギャラリー」を連載、2013年には同協会から『ぼくは、図書館がすき―漆原宏写真集』を刊行された。氏は一貫して利用者、職員、そしてさまざまな図書館への関与者の姿を図書館の空間の中に探し、発見しながら「図書館の風景」をいきいきとしたイメージとして記録されてきた。おそらくは後世の日本の図書館(史)研究者は、氏が残し定着させたイメージをもとに20から21世紀の日本の図書館の姿を理解し、再構築するに違いない。その他に代え難き功績は図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 小川千代子 氏(国際資料研究所代表/藤女子大学教授)
- 東京大学百年史編集室から国立公文書館で勤務される中で、1989年に米国・認定アーキビスト・アカデミー(Academy of Certified Archivists)資格を得て、1993年からは独立してDJI(Documenting Japan International: 国際資料研究所)を設立。以後、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会、記録管理学会、ICA(International Council of Archives: 国際文書館評議会)などの学協会での諸活動ならびに藤女子大学ほかでの教鞭など、近年の日本におけるアーカイブズ事業のほぼあらゆる方面において国際的、先導的かつ啓蒙的な活動を展開されてきた氏の業績は、図書館界に対しても多大な恩恵をもたらしており、その功績は図書館サポートフォーラム賞にふさわしく、高く評価して表彰するものである。
- 戸塚隆哉 氏(元・情報科学技術協会〔INFOSTA〕)
- UDC(Universal Decimal Classification: 国際十進分類法)は、ベルギーのポール・オトレ、アンリ・ラ・フォンテーヌが19世紀の末に、「本」を書架に分類配架するために開発されたデューイのDCを克服し、「文献」を分類するツールとして開発され、特に科学技術系専門図書館において多く採用されたものである。
- 日本でも、氏が事務局をされていた2つの継続する協会において日本語版が維持されてきたが、2004年の同協会のUDC事業からの撤退後も、UDCコンソーシアムにおける日本側アドバイザーに就任するとともに、2002年発行のUDC CD-ROM版以来途絶えていた日本語版(要約版)を10年ぶりに作成・公開に尽くされた。
- ともすれば今日、検索において看過され、忘れられがちな分類の意義を、UDCの日本語化を通じて再考を促す氏の業績は、あらためて高く評価されるべきものであり、図書館サポートフォーラム賞として表彰するものである。
第16回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2014/4/21 授賞式)
- 挨拶:山ア久道 氏(図書館サポートフォーラム代表幹事)
- 講評:水谷長志 氏(表彰委員会委員長)
- 栗田明子 氏((株)日本著作権輸出センター(JFC) 相談役)
- 明治以来日本は、文芸においては大変な輸入超過大国である。日本人の著作が海外の出版社に紹介されて、翻訳され、海外の図書館に入り、そして多様な国民に読まれ、理解されることも念頭に、栗田氏は日本の著作権輸出という困難に果敢に取り組んだまさにパイオニアである。その著書『海の向こうに本を届ける著作権輸出への道』(晶文社, 2011)は、まるで出版界の「兼高かおる世界の旅」のように刺激的であり、エンカレッジングな記録であり、またチャーミングな自伝的著作である。栗田氏による、著作権輸出の仕事は、出版ビジネスを世界的にし、そして図書館の棚を国の内外において広く豊かにした。その功績は、図書館サポートフォーラム賞にふさわしいものであり、評価し表彰するものである。
- 堀内佳美 氏(アークどこでも本読み隊 代表)
- 堀内氏は全盲にもかかわらず、2010年よりタイに暮らしながら、「アークどこでも本読み隊」を立ち上げた。読書の機会が少ない子どもたちに読書会を開く移動図書館の活動を続けて、2013年11月にはコミュニティ図書館もオープンさせた。タイ国内には70以上の少数民族や1,000万人以上の障害者がおり、その多くは学校や図書館の施設が少ない農村部に暮らしている。そのような環境の中、「本は世界の窓」をキャッチフレーズに、自らのハンデキャップをものともせず、子どもたちに本や物語を届け、読書や学習の機会を現地のタイ人スタッフとともに展開している。「アークどこでも本読み隊」の運営は、海外における読書推進活動のよきモデルを実践・提示していると言えよう。今後の継続発展への期待をこめつつ、その国際性と行動力を高く評価し表彰するものである。
- 太田泰弘 氏(元・味の素食の文化センター主任研究員/前・文教大学教授)
- 太田氏は味の素食の文化センター主任研究員として在職中から約30年に亘り調査研究した成果を『日本食文化図書目録 江戸〜近代』(日外アソシエーツ,2008)として刊行した。本書はわが国の江戸時代以降の食文化に関わる6,300件の図書の解題書誌であり、570頁に及ぶ類書の無い大著労作である。2013年に和食は世界遺産としてユネスコに登録され、本書の価値はますます高まるに違いない。加えて文教大学国際学部教授、情報知識学会専門用語研究部会長、日本ドクメンテーション協会(現:情報科学技術協会)理事等歴任の他、神奈川県資料室研究会など企業間ネットワークの設立に尽力されるなど、多岐にわたる氏の功績を評価し表彰するものである。
第15回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2013/4/22 授賞式)
- 挨拶:山ア久道 氏(図書館サポートフォーラム代表幹事)
- 講評:水谷長志 氏(表彰委員会委員長)
- 岩瀬文庫ボランティア
- 愛知県西尾市に所在する岩瀬文庫は明治41年、市内の実業家・岩瀬弥助の私財により設立された古典籍中心の私立図書館を起源とし(昭和30年に市の所管となる)、重要文化財である後奈良天皇宸翰般若心経をはじめ極めて多岐に渡る稀覯本を含む蔵書を有している。和装本の綴じ直しや中性紙保存帙の作成などの蔵書の保存修復、各種講座や広報活動の支援のためにボランティア・グループが平成17年に組織され、今日50名を越す会員により一貫して岩瀬文庫を西尾市の文化の顔たらしめて来た。“古書のミュージアム”という、公立博物館としては非常にユニークな岩瀬文庫を支援するこのボランティアの活動は、地域コミュニティの文化拠点の形成の範となるものとして、その意義を高く評価し表彰するものである。
- 谷合佳代子 氏(大阪産業労働資料館(エル・ライブラリー)館長)
- 「働く人々の歴史を未来に伝える図書館」をモットーとする愛称エル・ライブラリーは2008年の開館であるが、その前身である大阪社会運動協会の資料室は1978年以来、労働組合や企業、市民団体の貴重な歴史的資料を数万点所蔵する歴史資料館であり、最新の労務管理情報・賃金データなどを収集する図書館として活動してきた。近年、母体である財団法人大阪社会運動協会への大阪府・大阪市からの補助金全額廃止という事態にもかかわらず、同協会の公益財団法人化を果たした谷合氏は館長として千本沢子館長補佐とのコンビにより、労働専門図書館の活動を継続しつつ、さらにsaveMLAKの活動にも果敢に取り組んでいる。実情は言葉にし難いほどの苦境にあって、なお「21世紀のアーキビストたる自覚と矜持」を持って邁進されるその姿勢と図書館経営の維持の功績について、その意義を高く評価し表彰するものである。
第14回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2012/4/9 授賞式)
- 挨拶:山ア久道 氏(図書館サポートフォーラム代表幹事)
- 講評:水谷長志 氏(表彰委員会委員長)
- 稲葉洋子 氏(元神戸大学附属図書館勤務 帝塚山大学非常勤講師)
- 1995年1月17日の阪神・淡路大震災を機に神戸大学図書館は被災地の図書館の責務としてこの震災に関わるあらゆる資料を網羅的に収集する「震災文庫」を立ち上げ、一般公開した。その発足から事業の中心的存在として陣頭指揮を貫徹し、網羅的収集・保管・保存からデジタルアーカイブの構築、そしてWebへの情報発信までをリードした功績は、2011年3月11日の東日本大震災以後のいわゆる震災アーカイブの先例となり、よきモデルを提示することにもなっている。このような「震災文庫」の今後の継続発展への期待をこめつつ、その意義を高く評価し表彰するものである。
- 金沢幾子 氏(元一橋大学附属図書館勤務)
- 1973年から2004年3月末日まで一貫して一橋大学の図書館員として勤務。経済学はもとより広く社会科学全般にわたる文献を知悉して、天野敬太郎の『河上肇博士文献志』を範としながら河上の先輩であり日本近代経済学のパイオニア的存在の福田徳三を対象とし、一橋での奉職の約30年のうちの20年余の歳月をかけて関係資料を博捜かつ綿密な考証を重ねて、対象人物の生涯に迫る、まさに「福田の伝記的書誌」を900ページに迫る大冊にまとめあげた。本書誌は福田研究に資するのみならず、社会科学文献書誌の理想形を示しえた点においても意義あることとして高く評価し表彰するものである。
- 奥出麻里 氏(千葉メディカルセンター(前川鉄千葉病院)図書室)
- 病院図書室研究会(現日本病院ライブラリー協会)副会長、日本医学図書館協会評議員、同病院部会幹事などの役職をこなすとともに、保健・医療系図書館員「みんなでつくる」デスクトップ LITERIS(http://literis.umin.jp/)の編集長から、好著として名高く版を重ねる『図解PubMed の使い方 インターネットで医学文献を探す』(日本医学図書館協会、2001-2006-2010)の共著、さらにヘルスサイエンス情報専門員(上級)を取得するなど、ワンパーソン・ライブラリーの病院図書館を切り盛りする中で展開されてきた、その旺盛な組織、執筆、講演等の活動と姿勢は、後進への力強い励ましとなっていることを高く評価し表彰するものである。
第13回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2011/4/11 授賞式)
- 挨拶:山ア久道 氏(図書館サポートフォーラム代表幹事)
- 講評:水谷長志 氏(表彰委員会委員長)
- 河塚幸子 氏(元ナショナル住宅産業(株)・近畿大学非常勤講師・(社)情報科学技術協会理事)
- 大手住宅企業に34年勤務し、女性管理職としては3番目に技術情報担当課長の重責を担って社内情報管理システムを開発、普及徹底につとめ社長賞の受賞も2度に及んでいる。平成5年以降は主としてINFOSTAのサーチャーセミナー等の講師として社外活動においても新風をもたらすとともに、平成14年早期退職後は司書講習等非常勤をつとめるに加え、「市場化時代のビジネス支援図書館の経営−現状と課題」の修論をもって大阪市立大学大学院経営研究科を修了するなど、その旺盛かつ積極果敢な行動を高く評価し表彰するものである。
- 飯澤文夫 氏(元明治大学図書館勤務 明治大学史資料センター研究調査員)
- 32年間一貫して郷土史研究雑誌の目次情報を丹念に博捜して「地方史研究雑誌目次速報」を編集、1997年から年刊累積版として『地方史文献年鑑』を刊行している。考古学・民俗学・産業史・人物研究等々の広範囲にわたる地域研究の基礎的資料でありながら、ともすれば埋もれがちなこの種の雑誌を継続して発掘し刊行する氏の姿勢と努力は、極めて高く評価されるべきものであり、また「速報」と『年鑑』の出版を担った岩田書院の功績もまた多としながら、表彰するものである。
- 高山京子 氏(元法務図書館勤務)
- 法務図書館に眠る約2万点の未整理図書を同図書館最後の「生き字引」としておよそ10年の歳月をかけ、ボランタリーで一点一点の図書を吟味し目録化したことは、近代日本法制史研究にとって測りしれない功績を残すものとして高い評価を得ている。その作業にあたっては元宮内庁図書館勤務の藤井祥子氏の助力が大きかったとも伝えられている。図書館員が在職中に培った知見と技能を退職後このように形あるものとして成果を残したことは、生涯現役を願う後進に大きな夢を与えたという意味においても、評価し表彰するものである。
- お祝いの言葉:松尾浩也 氏(法務省特別顧問・東京大学名誉教授)
第12回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2010/4/13 授賞式)
- 木原祐輔氏 (キハラ株式会社会長)
- キハラ株式会社の代表を1965年から最近まで50年近くつとめ、一貫して良質の図書館用品を提供してきた。2004年からはキハラ創業90周年記念事業としての「歴史的図書館用品の調査・収集・保存」事業を、日本図書館協会からの委託を受けて先導して行っている。
- これは図書館用品の一層の品質向上をはかるとともに、近代日本図書館史研究に多大の貢献をもたらすものである。故清水正三氏が提唱された「図書館博物館構想」を、ぜひ実現できるよう、これを契機に、図書館界あげての支援体制ができることへの期待も込めて表彰する。
- 水谷長志氏のお祝いの言葉
- 吉村敬子氏 (元米国議会図書館勤務)
- WDC(ワシントン文書センター)に保存され、後に米国議会図書館の現アジア部日本課に移送された、日本の戦前・戦後検閲資料ならびに文書の目録が、前2冊(米国議会図書館発行)に続くものとして、今回「戦前・戦後検閲資料及び文書」全3巻としてまとめられ、2009年7月に文生書院から刊行された。
- この目録は主要な資料・文書には注訳がつけてあり、全ての資料・文書は原本にあたった上で、原稿を作成したものである。著者である吉村敬子さんは、東洋文庫、ハーバード大学イエンチン図書館、米国議会図書館などに勤務し、その目録作成の経験を生かし、1998年の退職後に本書をまとめられた。単なる目録ではなく、詳細な注訳がなされた労作である。
- 長年の経験を生かして執筆された本書を、昭和史研究に必携の貴重な著作として評価し、表彰する。
- 古賀節子氏のお祝いの言葉
- 神奈川県立川崎図書館
- 神奈川県立川崎図書館は、1958年に設立され、50年以上の歴史を有する公立の産業図書館である。県立図書館としては珍しいが、神奈川県立としては二つ目の図書館であったという事情もあり、一般的な公共図書館ではなく、最初から所在地である川崎市が京浜工業地帯の中心であったことから、その機関誌を「京浜文化」と命名するほどに、京浜地区の産業発展に寄与することを目指してきた。
- いわゆるビジネス支援図書館の草分け的な存在であり、しかも、神奈川県資料室研究会という地域密着の図書館支援組織を図書館設立直後から立ち上げ、図書館が地域を支え、行政も含む地域が図書館を支援し、活用するという理想的な図書館活動を行ってきた。ビジネス支援図書館の先駆として、さらに、神奈川県資料室研究会という支援組織の事務局として機能してきたことを高く評価し、表彰する。
- 末吉哲郎氏のお祝いの言葉
第11回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2009/4/14 授賞式)
- 藤野幸雄氏 (元・図書館情報大学副学長)
- 国際文化会館図書室長の実務を経て、図書館情報大学教授・副学長、東京農業大学教授などを勤めた。図書館史、出版文化史の専門家として、『大英博物館』(岩波新書、1975年)から近著『図書館 この素晴らしき世界』までの70点以上に及ぶ著作は、「図書館についての啓蒙書」となっており、図書館の価値を一般の人にもわかりやすいように語り続けている。
- 木部 徹氏 ((有)資料保存器材)
- 有限会社資料保存器材を創業し、新しい資料保存(コンサベーション)の実践に取り組み続けている。また、同社ホームページに、2005年から「ほぼ日刊資料保存」を立ち上げ、世界と日本の資料保存の動向を、広くしかも的確、迅速に、図書館、アーカイブズ、文化財関係者などに知らせている。講演、執筆など多数あり、主な著作には『容器に入れる』(日本図書館協会、1991年)、『図書館と資料保存』(雄松堂出版、1995年)、『IFLA 図書館資料の予防的保存の原則』(日本図書館協会、2003年)などがある。
- 大森一彦氏 (元・東北工業大学図書館)
- 東北工業大学附属図書館の司書として永く勤務し、また書誌の研究者・作成者として、40年をかけて作成した寺田寅彦の書誌(『人物書誌大系36』日外アソシエーツ、2005年)の他、中谷宇吉郎、マイケル・ファラデイなどの物理学関係者書誌を作成した。さらに、私立大学図書館協会文献探索研究会の通信会員として、会誌『書誌メモ』、『書誌調査』、『文献探索』に書誌と書誌論を毎号寄稿し、会員や書誌関係者に明確な指針を与えた。
★図書館サポートフォーラム賞 特別表彰
- 末吉哲郎氏(前・図書館サポートフォーラム代表幹事)
- 末吉哲郎さんは、経団連(現・日本経団連)図書館で様々な革新的な経営やサービスを実践されるとともに、関連の専門家のネットワークを形成し、その中からJOINT(雑誌記事索引経済産業編)を生み出すなど図書館界において先進的な試みを数多く実施されました。また、企業史料、美術・音楽などの分野でも、団体運営の手腕をいかんなく発揮され、こうした活動の充実に多大な寄与をされました。団体創りの集大成として創設した「図書館サポートフォーラム」では指導的な役割を果たし、独自のコンセプトに基づく「図書館サポートフォーラム賞」を発案されるなど、本会の運営に多大な貢献をされました。
- 戸田光昭氏・山ア久道氏講評
第10回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2008/4/11 授賞式)
- 飯島 朋子氏(元・一橋大学附属図書館勤務)
- 一橋大学図書館の司書として永年勤められ、その間、多くの意欲的な業務報告を発表される傍ら、ブロンテ姉妹やギャスケルの研究や文献目録に関する著作を多数発表された。これらは、いずれも多忙な業務の合間を縫ってものされたものである。その一方、図書館や図書館員が登場する映画を渉猟し、その調査結果を類型化して発表された。このことは、図書館を社会に認知させる上で大きな効果があったと考えられる。
- 佐藤 正氏(ライブラリー・カフェ・ヴィッセン)
- 大学で司書資格を取得され、都内の医学図書館、短大図書館で司書として永く勤務の後、コンピュータシステム会社に転じた。その後、「司書という職業の持つ意義を生かしたカフェを経営する」という年来の夢を実現させるために、会社を退職し、起業方法の研修、紅茶等食品提供に関する資格を取得した後、2006年4月に「ライブラリー・カフェ・ヴィッセン」を多摩市に開いた。カフェの心地よさ、ライブラリーの情報提供機能、コミュニティとしての人の交流という3点の明確で魅力的なコンセプトのもとに運営されている。
- 肥田 美代子氏(文字・活字文化推進機構理事長)
- 児童文学作家であり、1989年参議院議員に初当選以来、国会において「国際子ども図書館」の設立に尽力するとともに、「子どもの読書活動推進法」「文字・活字文化振興法」を議員立法として実現させる運動の先頭に立ち、両法を成立させた。2007年10月、両法に基づく実際の推進機関として設立された「文字・活字文化推進機構」の理事長に就任し、読書文化や図書館の振興に力を尽くしている。
- 山ア久道表彰委員長講評
第9回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2007/4/13 授賞式)
- 平井 紀子氏(元文化女子大学図書館司書長)
- 服飾の専門司書として長年にわたって実務に携わり、大学図書館の責任者として後進の指導にもあたられた。さらにその活動の中から、目録、索引、文献解題等ドキュメンテーション活動に励まれた。特に池田文庫の資料を対象に世界各国の服装を平易な文章で解説した『解題集』はわが国初の試みとして評価され、図書館司書としての新しい領域を開いた。
- 水谷 長志氏(東京国立近代美術館主任研究員)
- 美術図書館の活動ならびに美術館やアートにおける情報システム、ドキュメンテーションでの先進的な取り組みを通じて斯界の発展に貢献するとともに、さまざまな関連団体の立ち上げや運営に尽力された。それを通じて、この分野の重要性を社会に知らしめるとともに、活動の国際化にも貢献された。
- 松岡 資明氏(日本経済新聞 文化部編集委員)
- ジャーナリストの立場から、一貫して図書館やアーカイブズの重要性とその社会的意義につき紙面を通じて訴えてこられた。そのことを通じて、こうした機関や機能の社会的認知と正しい理解を大きく推進し、また図書館やアーカイブズで働く人々に社会への目を向けさせるとともに、関係者を力強く鼓舞された。
- 山ア久道表彰委員長講評
第8回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2006/4/20 授賞式)
- 松岡 享子氏(東京子ども図書館理事長)
- (財団法人)東京子ども図書館は、児童室・文庫の運営、資料室(児童関係専門図書館)、調査研究、機関誌の発行、講演会、講習会、出版、人材育成などをおこなう、「子どもの読書」を専門主題とした、税金をまったく使わない、過去にその例を見ない、館種を越えた図書館である。意欲と信念と実行力と勇気と想像力の人、松岡享子氏ならではの仕事である。
- 近江 哲史氏(日本企業文化研究所所長)
- 「図書館に行ってくるよ」、「図書館力をつけよう」などの著作は、1)図書館に関する広範囲にわたる、並々ならぬ勉強のあとをうかがわせる、2)その勉強で得た知識はよく咀嚼されていて、知恵として結実している、3)親しみやすい文章でその知恵の伝授が図られ、読者に「よし自分も」という気にさせる力を持つ。想像力豊かな図書館の非専門家ならではの仕事である。
- 高橋 晴子氏(大阪樟蔭女子大学学芸学部助教授)
- 服飾・身装関係の資料収集、データベース化から始まり、民博などでの共同研究を踏まえた「身装概念コード、分類コード」の開発、更に最近の新聞小説挿絵、雑誌掲載写真等画像資料の批判的読み取りまで、常に新しい課題に挑みつつ学問研究とドキュメンテーションとの融合を目指し、著作物、雑誌編集等を通じてその成果の普及に努めてきた功績。
- 井上如表彰委員長講評
第7回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2005/4/15 授賞式)
- 菊池 佑氏(日本病院患者図書館協会会長、IFLA常任委員)
- 岩手県出身。図書館短期大学別科修了。大学図書館勤務の傍ら、1974年日本病院患者図書館協会を設立し、国内の全国調査と欧米視察の知見を踏まえて、わが国初の専任司書担当の患者図書館となる県立静岡がんセンター「あすなろ図書館」を実現させるなど、病院患者図書館の調査・研究・普及活動で30年間常にパイオニアとして活動してきた。最近、芝大門(日赤の隣)に「いのちの図書館」を開設する等、活躍はとどまることを知らない。
- 京藤 松子氏(元アメリカンセンター資料室司書)
- 米国ルイジアナ州立大学大学院図書館情報学修士課程修了。エール大学図書館東洋部に勤務し、日本研究・日米関係分野の研究者の研究支援に努めた後、帰国。1972年より米国政府機関であるアメリカンセンター資料室に33年間勤務、このたび退職した。その間、米国政府関係の日本国内への情報提供をはじめ最新の情報技術に関する情報提供、図書館情報学の学生・教師をはじめ日本人研究者の渡米準備への指導助言、「誰のための図書館」の翻訳出版、さらには日本の専門図書館協議会と米国 Special Libraries Association との強力なパートナーシップの確立に尽力するなど館界に多彩な貢献をした。今後の更なる活躍が期待される。
- 小林 是綱氏(山中湖情報創造館館長)
- 山梨県立図書館司書、石和町立図書館設立(初代館長)を経て、初代館長として大泉村に八ヶ岳大泉図書館を建設し「金田一春彦ことばの資料館」を設置。一方、県内の図書館ネットワークなどパイオニアとしてIT化を推進、図書館資料のデジタル化による資産の共有をはかるため、NPO地域資料デジタル化研究会を立ち上げ、現在は山中湖に情報創造館を設立させ、その運営を受託している。館界の常識をこえた、斬新なアイディアと行動力の人である。
第6回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2004/3/18 授賞式)
- 金沢工業大学ライブラリーセンター(竺 覚暁館長)
- 自動貸出返却装置とサブジェクトライブラリアン制度を両輪として、日本のリサーチ・ライブラリー全体の地位向上に貢献した功績。
- 多摩地域の図書館をむすび育てる会(代表:黒子恒夫氏)
- 共同保存図書館をめざした東京都多摩地域の「たまむすびの会」の努力と、その先駆性の功績。
- 村橋勝子と「社史の研究」
- 社史に含まれる情報提供の豊富な経験を基に、「社史の研究」を出版し、その制作と活用法に光を与えた功績。
第5回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2003/3/11 授賞式)
- 新田 満夫氏(雄松堂グループ代表)
- 西洋古典に関する知見を基に、永年わが国の学術図書館界の蔵書構築に寄与し、図書館とその環境まで広く視野に入れたフェアの開催を通じて斯界の発展に貢献した功績。
- 波多野 宏之氏(国立西洋美術館)
- 美術関係資料のドキュメンテーション界に永年にわたり指導的役割を果たし、IFLA等の国際機関を通じて内外の情報交流を促進した功績。
- 松下 鈞氏(国立音楽大学図書館)
- 音楽関係のドキュメンテーションを通じ、学生教育の向上、出版、知識の普及を促進する等の指導的役割を果たした功績。
第4回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2002/2/14 授賞式)
- 財団法人 松竹大谷図書館
- 国内随一の演劇・映画総合専門図書館を一民間団体として運営し、研究・教育など社会に貢献を続けている功績。
- 立川とラオスを絵本で結ぶ会
- 絵本を翻訳しラオスへ送付する活動を通じて、市民の手による国際交流を行っている功績。
- 渡辺 順子氏
- 文庫を運営し、ブックスタートの実践や布の絵本普及といった子供と本を結び付ける活動を行ってきた功績。
第3回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2001/2/15 授賞式)
- 深井 人詩氏
- 日本における「書誌の書誌」の構築およびその研究会活動を通じて図書館界に貢献した功績。
- 図書館とともだち・鎌倉
- 「市民が主役」の理念のもと地域図書館をサポートする幅広い活動をNPO団体として行ってきた功績。
- むすびめの会
- 様々な人々との共生の観点から図書館に多文化サービスが根付くことをめざし図書館と在住外国人を結びつけるための国際性豊かな活動の功績。
第2回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(2000/2/16 授賞式)
- 本間 一夫氏(社会福祉法人 日本点字図書館理事長)
- 1940年の開館以来、点字図書・録音資料等の製作貸出を通じて福祉の向上に寄与した功績。
- 三多摩レファレンス探検隊
- 図書館の基幹業務であるレファレンスについて、自発的な研鑽を続け、その成果を共有して図書館活動の発展に寄与した功績。
- 安井 清子氏
- ラオス難民の子ども図書館活動に積極的に取り組み、また、出版活動を通じた国際的貢献に寄与した功績。
第1回 図書館サポートフォーラム賞受賞者(1999/2/15 授賞式)
本サイト内に掲載された記事、画像を個人、団体のホームページや
他の出版物などに許可なく転載することを禁じます。
Copyright © 2009 NICHIGAI ASSOCIATES, Inc., All rights reserved.
他の出版物などに許可なく転載することを禁じます。
Copyright © 2009 NICHIGAI ASSOCIATES, Inc., All rights reserved.