ご挨拶(山崎久道氏:図書館サポートフォーラム代表幹事)

山崎久道氏 代表幹事を仰せつかっております山崎でございます。

 恒例となっております図書館サポートフォーラム表彰式も11回を数えることとなり大変ありがたいことだと思っております。

 この賞につきましては、後で戸田表彰委員長から選考経過などのお話があるかと思いますが、図書館に関していろいろ地道な活動をなさっている方、あるいは図書館の活動を社会に広く周知することに力のあった方、国際的な活動をなさっている方などいろいろな形で図書館の世界を外部に知らしめていると同時に情報の面でいろいろな貢献をされた方を顕彰させていただくとともにこれを契機にますますご研鑚を頂いて成果をあげていただければ大変ありがたいと存じます。

 今回も3名の大変すばらしい方を表彰させていただける事をうれしく思っております。

 これから選考の経過あるいはそれに基づいた受賞者の方のスピーチがございますが、今回はそれに加えて特別表彰ということで末吉哲郎さんを表彰させていただきます。いずれにしても今回は4名の方に表彰の楯を差し上げるということでございますので、是非、皆様に表彰式を盛り上げていただければと思っております。よろしくお願い申し上げます。


講評 戸田光昭氏(表彰委員長)

戸田光昭氏 私は、今回初めてこの表彰委員会のまとめとして、皆様にご紹介する役をすることになりました。

 4人の方の表彰について最初に選考経過を申し上げて、それからすでに公表されておりますけれど、表彰理由を読み上げさせていただきます。最後に若干のコメントを申し上げたいと思います。

 私の方からは3人の方について申し上げます。末吉前代表幹事については特別表彰になりますから、山崎代表幹事のほうから表彰理由を申し上げます。

 選考の基準等につきましては、先ほど代表幹事の山崎さんのほうからお話のございました通りであります。今日表彰式にはじめて参加されるサポートフォーラムの会員でない方も居られると思いますので、図書館サポートフォーラムについて簡単に紹介をさせていただきます。


1.選考経過

 図書館サポートフォーラム(Library Support Forum)は、1996年に発足した有志の集まりですが、図書館関連の職場から既に退職した人たち、あるいは他の職場に転出した人たちを中心としています。現在でも図書館関連の現場で活躍している方々をサポートしようという考えで作られました。そして、その活動の大きな柱として表彰事業があります。今回は第11回を迎えます。

 表彰対象は原則として個人であり、最近では、団体、特に図書館そのものを対象とすることは、原則としてしないという考えで選考しております。(これは、図書館総合展などで、団体表彰が行われるようになったという事情もあります)

 2009年2月24日、開催の表彰委員会において、ノミネートされた12候補について選考を行いました。その結果、藤野幸雄氏、木部徹氏、大森一彦氏の3名の方の表彰を決定しました。


2.講評

 お手元に配布したのは、表彰委員会での資料と同一のものですが、それぞれの方々についての表彰理由と表彰の裏づけとなる資料がまとめてあります。ご参照下さい。

 それでは、表彰理由を読ませていただきます。

 最初は、藤野幸雄さんです。

 「国際文化会館図書室長の実務を経て、図書館情報大学教授・副学長、東京農業大学教授などを勤めた。図書館史、出版文化史の専門家として、『大英博物館』(岩波新書、1975年)から近著『図書館 この素晴らしき世界』までの70点以上に及ぶ著作は、「図書館についての啓蒙書」となっており、図書館の価値を一般の人にもわかりやすい内容で、語り続けている。」

 藤野さんは、昨年、喜寿を迎えられました。その時に、ご著書がちょうど77冊になったという伝説があります。それほどに単行書としての著作が多い方であります。図書館界でこれほど多くの本を出版している人は、日本には、おられないと思います。

 このように、多くの著作があり、しかも教科書はほとんど無い。また、翻訳書もかなり少ない。専門家だけでなく、一般の人にも読んでもらえる内容である。このような本を書ける図書館学者は、日本にはほとんどおられない。これが一番強調した点であります。

 次は、木部徹さんです。表彰理由を読みます。

 「有限会社資料保存器材を創業し、新しい資料保存(コンサベーション)の実践に取り組み続けている。また、同社ホームページに、2005年から「ほぼ日刊資料保存」を立ち上げ、世界と日本の資料保存の動向を、広くしかも的確、迅速に、図書館、アーカイブズ、文化財関係者などに知 らせている。講演、執筆など多数あり、主な著作には『容器に入れる』(日本図書館協会、1991年)、『図書館と資料保存』(雄松堂出版、1995年)、『IFLA 図書館資料の予防的保存の原則』(日本図書館協会、2003年)などがある。」

 日本ではこれまで、図書館と文書館(アーカイブズ)の関係が良好であったとはいえないと思います。図書館に貴重な文書があると、歴史学者は早く図書館からそれらを救い出して、文書館や史料館へ入れようとします。それほどに、図書館における文書(アーカイブ)の取り扱い(処理法)は問題があったのです。特に保存上の課題があったのです。これらに関して、木部徹さんは、保存器材という商品を通じて、そのハードとソフトの両面を、専門業者という立場を超えて、図書館関係者も含めて、講演、執筆、編集・発行などの活動を通じて啓蒙、教育、研修を行い、特に図書館関係者に大きな影響を与えているのです。

 三人目は大森一彦さんです。表彰理由を読みます。

 「東北工業大学附属図書館の司書として永く勤務し、また書誌の研究者・作成者として、40年をかけて作成した寺田寅彦の書誌(『人物書誌大系36』日外アソシエーツ、2005年)の他、中谷宇吉郎、マイケル・ファラデイなどの物理学関係者書誌を作成した。さらに、私立大学図書館協会文献探索研究会の通信会員として、会誌『書誌メモ』、『書誌調査』、『文献探索』に書誌と書誌論を毎号寄稿し、会員や書誌関係者に明確な指針を与えた。」

 『書誌索引展望』(日外アソシエーツ発行)にも多く寄稿しておられましたが、この雑誌の編集母体であった日本索引家協会が解散してから、20年近くになります。この団体が存続していたら、大森さんも業績の多くを、この雑誌に掲載し、もっと多くの書誌索引類や論文を作成・執筆していたかも知れないと思うと残念です。

 大森さんの論文には、書誌から学者の真の成果を探ろうという意図があるように思えます。研究業績リストに関するいくつかの論文において、そのことを扱っているのではないでしょうか。(論文A7「研究業績リストの書誌的考察」、A9「研究業績リスト編集の標準化」)

 また、『人物書誌大系36:寺田寅彦』は350ページ近くの大部ですが、あらためて読ませていただきたい書物です。レファレンスツールとしてよりも、読み物としての興味が一層深まりました。


3.最後に

 今回は、特別賞の末吉哲郎さんを含めて4名の方々が受賞されました。フォーラム賞の第1回は4名でしたが、その後は前回(第10回)まで3名ずつです。それらの方々のうち、最近の5回分を『図書館関係専門家事典』(1984年、日外アソシエーツ)で調べてみました。第7回(2005年)は三分の二、第8回は三分の一、第9回は三分の一、第10回はゼロ、そして今回(第11回)は四分の三の方々が、この事典に掲載されていました。 この結果は、様々の見方があると思いますが、積極的に評価すれば、この事典の有効性、つまり、現在でも、これは参考図書(レファレンスブック)として使えるということであります。

 しかし、一方では、このフォーラム賞はユニークという面も強調していますから、この事典に掲載されていない人も、できるだけ広く対象とするという点では、前回の掲載者ゼロは、画期的な表彰だったという評価もできるでしょう。

 この事典は、25年前の出版でありますから、その時、生まれていなかったり、社会に出ていなかったりという人は掲載されていません。図書館関係専門家ということで、対象を絞っていますので、周辺領域の人も入っていません。

 今年の受賞者は、それぞれに、図書館活動における大先輩であります。遠方からお越しいただき、表彰式にご出席いただけるだけでも、フォーラム関係者としては、大変に光栄なことです。ありがたいことであります。

 本日は、本当にありがとうございました。そして、授賞を心からお祝い申し上げます。おめでとうございます。



講評 山崎久道氏(図書館サポートフォーラム代表幹事)

 それでは末吉様の表彰理由についてお話したいと思います。

この中に末吉さんのことを知らない方はほとんどいらっしゃらないと思いますが、慣例ですから、このような形で進行させていただきたいと思います。表彰理由として配られたものを最初に読ませていただきます。


末吉哲郎 様:前・図書館サポートフォーラム代表幹事

 「経団連(現・日本経団連)図書館で様々な革新的経営やサービスを実践されるとともに、関連の専門家のネットワークを形成し、その中からJOINT(雑誌記事索引経済産業編)を生み出すなど図書館界において先進的な試みを数多く実施されました。また、企業史料、美術・音楽などの分野でも、団体運営の手腕をいかんなく発揮され、こうした活動の充実に多大な寄与をされました。団体作りの集大成として創設された「図書館サポートフォーラム」では指導的な役割を果たし、独自のコンセプトに基づく「図書館サポートフォーラム賞」を発案されるなど、本会の運営に多大な貢献をされました。」

 一言だけ付け加えさせていただきますけれども、末吉さんのこれまでの活動というのは、図書館を明確に社会の中に位置付けるこういう活動だったのではないかというふうに思っております。

 社会というのは、実はいろいろありまして、一般社会であったり、あるいはビジネスの場であったり、あるいは国際的な視野の中でそういうものを捉えて大変多面的な形で図書館というものの重要性をアピールされつづけておられるのではないかと思っております。

 末吉さんが、先程団体作りの名手という話をよく言われますけれど、私は末吉さんご自身が団体みたいな方だと思います。末吉さんは、渉外から営業、企画まで全部お一人で出来るんです。末吉さんご自身がお一人の団体なのです。一人団体だと私は思っておりまして。全くユニークな才能を発揮されて、私達にいろいろなことを教えてくださっているわけです。

 そのなかで、印象に残っているのは図書館を産業として捉えていることで、いまでこそ、その考え方はあたりまえのようになりまして、図書館に関連したデータベースのサイトでありますとか電子ジャーナルとか図書館システムとかあるいは図書館の委託など最近議論になっておりますけれど、そのような末吉さんの考えが実現してきたように思っております。

 ただ図書館を産業として考えるというのは、今やいろんな人が言っているので何も末吉さんの専売特許ではない。私は末吉さんだけしかやってないことが1つだけあると思います。それは図書館をエンターテイメントと考えることなんです。こんな人は他に見たことがありません。

 もちろん、いい意味でのエンターテイメントです。要するに、そこでみんなが自分を自己実現しながら、そして何か楽しく、まわりも楽しくして幸せにしてゆくんだという精神で、末吉さんは、活動されてきた。その意味では末吉さんの前に末吉さんはいなくて、末吉さんの後にも末吉さんはいないというような、大変ユニークな業績を残されました。図書館の世界というものの幅を広げていただいたということで、私共としては大変感謝をしております。

 このサポートフォーラムも先ほどから話のありましたように、末吉さんの卓抜したアイデアから生まれたものでありまして、今後ともこの会を発展させて、末吉さんの発案というものを大きく花開かせて生かしてゆくことが私達の使命であろうと思っています。本日は末吉さん、まことにおめでとうございます。ありがとうございました。