小山 騰 氏(元・ケンブリッジ大学図書館日本部長) 受賞のことば


小山騰氏 このたび、名誉ある図書館サポートフォーラム賞をいただくことになり、大変光栄に思っております。また、大変感謝しております。たまたま海外に在住している関係で、4月23日に開催される受賞式に参加することができず、大変心苦しく思いますが、かわりに英国からこのメッセージをお送りして、今回同じ図書館サポートフォーラム賞を受賞されるみなさまとご一緒に受賞の喜びをわかち合い、また同時に図書館サポートフォーラムの関係者のみなさまへの感謝の意を表したいと思います。まず最初に厚くお礼申し上げます。

 今回の受賞は、直接的には昨年刊行いたしました『ケンブリッジ大学図書館と近代日本研究の歩み:国学から日本学へ』という出版物に対するものでありますが、受賞する本人としては、海外、特に英国を含めたヨーロッパで日本研究のために日本語コレクションを担当している図書館員を代表していただくものであると理解しております。日本ではCEAL(Council on East Asian Libraries, 東亜図書館協会)の活動など、アメリカの図書館における日本語コレクションの事情は割と知られておりますが、比較的ヨーロッパの方の情報が手薄になっているように思われます。そこで、今回の受賞でEAJRS(European Association of Japanese Resources Specialists, 日本資料専門家欧州協会)などの動きにも注意が払われるようになるのではないかと思っております。というのは、『ケンブリッジ大学図書館と近代日本研究の歩み:国学から日本学へ』の主要な部分については、2016年にブカレストで開かれたのEAJRSの大会で発表したものであるからであります。アメリカだけに限らずヨーロッパにも日本の資料は所蔵されております。

 また、『ケンブリッジ大学図書館と近代日本研究の歩み:国学から日本学へ』については、実はもともと企画していたケンブリッジ大学図書館の日本語コレクションの歴史に関する書籍の前半部分にあたるもので、その前半部分が大きくなったので、まずそこの部分を一冊の本として出版した次第であります。後半部分にあたるケンブリッジ大学図書館やロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)の近代日本語コレクションの歴史については、近いうちに刊行したいと考えている。戦争と図書館というテーマにそって、英国における近代日本語コレクションの歴史をまとめる予定であります。

 私は日本で6年間図書館に勤めた後、海外では合計34年間ほど図書館員として働き、2015年9月末で定年退職いたしました。図書館員の資格を取ったのも英国で、ほとんどの図書館員生活は英国でおくりました。インターネットの出現などにより世界の状況は大きくかわりましたが、取り分け図書館を取り巻く環境は激変したように感じられます。日本でも状況はほとんど同じであると想像いたします。退職した後も週一度ボランティアとして前の職場で働いておりますが、最近の大学図書館の変化に追いつくのに四苦八苦している状態であります。Library Discovery ToolなどよりもOPACの方に親しんだ世代で、さらにそれよりも以前には、図書館員として図書館のカード目録を配列しておりましたが、むしろそのような作業をしていた時代が懐かしく感じられます。現在では、英国にいてもYou Tubeなどで日本のテレビ番組なども見ることができ、日本の情報は簡単に手に入りますが、以前は船便で日本から送付される書籍小包に詰め物として入っている古新聞を読んで日本の話題などを知る時代もありました。

 過去にも、海外で活躍した図書館員などが図書館サポートフォーラム賞を受賞した例がありますように、図書館サポートフォーラム関係者は海外にも目を向けて来ました。ただ、時代の流れとして図書館のグローバル化はますます加速しております。日本と海外との垣根はまた一段と低くなっております。ディジタル化などで貴重書、古典籍、写本、文書、雑誌論文など、さらに通常の書籍までがインターネットで利用できるようになると、インターネット上では、それらの資料はもともとの所蔵館から離れて、あたかも地球規模の図書館から提供されているように感じられます。そのような図書館のあり方までが大きく変わろうとする時代なので、社会的な枠組みなどを乗り越えて活動される図書館サポートフォーラムの役割はますます重要さを増すものと期待されます。今後のご活躍をお祈り申し上げます。