代表幹事の山崎でございます。
お三方、本日はおめでとうございます。
図書館サポートフォーラムは、ここにいらっしゃいます末吉前代表幹事が、図書館というものをもっと社会的な存在にしなければいけない、あるいは国際的連携をとらなければという壮大なお考えのもとに始められたもので、今こそその考え方が大事なものになってきているわけです。
申すまでも無く、今回の東日本大震災に関しましても、目を覆いたくなるような状況が発生しております。家も何もかも全てが流されてしまう中で、いわゆる記録とか文献とかの意義が認められてくる気がするのです。要するに、思い出とか記憶とか、あるいはその時の事実といったもの、そうした全てのものが流れ去ってしまう一方で、記録や文献は残るのです。資料とか文献の機能の社会的重要性をこのように身に迫って感じる機会が、これまで私たちにはなかったのではないでしょうか。
もちろん、大変に悲惨なことですが、こうした事態を前にして、図書館とか文書館、美術館、博物館などの使命が、さらに大きくなる気がしております。今回の被災は大変に不幸なことであります。しかし、その中で私たちは専門分野を持った職業人として、何か社会に貢献できないだろうかという精神によって、まさにこのフォーラムの設立の趣旨を活かすべきところに来ているのではないかということを実感しています。
今回、そうした図書館の世界で、地道に仕事をされてきた方を、表彰させていただけることは非常に嬉しいことでございます。こういった丹念な作業は、社会に対する大きな貢献だと思います。今、ここにいらっしゃる多くの皆様方も、お仕事をされてきたことと思いますが、その仲間の代表として、今回のお三方の表彰があるのだと思います。表彰の中身については後程、講評されますので、私からは今回の表彰が大変に意義深いものだということだけをお話しておきます。ありがとうございました。
表彰委員長の水谷と申します。本来なら戸田光昭先生のお役目でございますがその代役として仰せつかりました。
表彰委員長は初代井上如先生、二代目は山ア久道先生、そして三代目は戸田先生ですが、それぞれの委員長が皆、サポートフォーラムの文集に採録されておりますように、非常に奔放で素晴らしい表彰のコメントを残してくれております。私はそうした偉才がございませんので、皆様のお手許にあります「授賞理由」を読み上げるということで替えさせていただきます。
表彰委員会における選考は、本年2月25日に行われました。15名の方に投票をしていただいたのですが、実際に2月25日に出席された方は9名でした。9名の方に、まずは最大3つを選考していただいて、投票をしました。1次選考という形で、9名の方で3人の授賞者を決めたのですが、それが今日授賞の方々です。念の為ということで、欠席6名の方々の投票についてもカウントしたのですが、全く同じ結果が出ました。ということは、きわめて妥当な選考であったということで、すんなりと三名の授賞が決定いたしました。
まず河塚幸子さん。元ナショナル住宅産業にお勤めになられて、近畿大学ほか多数の大学で非常勤講師をされると共に、情報科学技術協会の理事などもなさっていました。きわめて広範なお仕事をされたということは、今日お配りしている資料からもお分かり頂けると思います。
34年間勤務された、ナショナル住宅産業では女性管理職として技術情報担当課長の重責を担われ、社内情報管理のシステム開発などをつとめて社長賞を二度も受賞されております。
平成5年以降は主としてINFOSTAのサーチャーセミナー等の講師として社外に出て、また、インターネットによる情報管理ということについても、先導的な役割をされたと伺っております。
平成14年に早期退職後は、司書講習等非常勤をつとめながら、再び大学の修士課程に入学され「市場化時代のビジネス支援図書館の経営│現状と課題」の修論をもって大阪市立大学大学院経営研究科を修了されました。斯界の先導者であると同時に、常に学ぶということを続けていらっしゃるその姿勢こそが、周りの者を鼓舞していったのではないでしょうか。その旺盛かつ積極果敢な行動を高く評価して今回の授賞とさせていただきました。
次に飯澤文夫さんについてお話いたします。
飯澤文夫さんは明治大学図書館に長く勤務されていて、明治大学史資料センターの研究調査員をされているということです。32年間、一貫して郷土史研究雑誌の目次情報を丹念に博捜して『地方史研究雑誌目次速報』を編集、1997年からは年刊累積版として『地方史文献年鑑』を刊行されています。
皆様のお手元に『地方史情報』といったものと、岩田書院の出版目録があると思うのですが、私の職場にもこれが届けられるたびに、何とすごいものが作られているのだろうかと感心させられておりました。一番最近の2011年3月の102号の編集後記を読ませていただくと「長く無人のままにしている長野県辰野町の生家は、築150年前後と推定される」というようなことが書かれていましたが、さすがにこういう生家を持つ方は歴史と深くかかわりあいながらお仕事をされているのかなと、改めて感じました。
地方史というのは、考古学・民俗学・産業史・人物研究など広範囲にわたると共に、歴史研究の基礎的資料でありながら、継続的な書誌情報や資料選定が非常に難しいものです。こうした地道な文献書誌の選定が継続されることによって、埋もれがちな資料が継承されているということは、大変に尊いことだと思っております。3.11の東日本大震災の光景を見ると、こういった地域資料というものは、災害の下ではまたたく間に消えてしまうと思われます。図書館やミュージアムあるいはアーカイブ、そういった館の中に入っている資料は何とか持ちこたえるのですが、民間のお宅にあった資料は本当にはかなく消えていってしまうものだなということを、今回の震災であらためて強く思いました。
そういう意味からも、飯澤さんが記録されているこの地方史に関わる文献の一点一点がいかに貴重であるか、こういった形で書誌、文献目録として編纂することによって、歴史が継承されていくのだということを、震災を目の当りにして思いました。
このようなお仕事を飯澤さんはされているのですが、同時に『地方史情報』といった雑誌や累積版を刊行しておられる出版社・岩田書院さん。この出版社のお仕事自体も非常に貴重なものとして表彰したいと思います。
三番目ですが、高山京子さん。元法務図書館勤務。朝日新聞の2009年5月17日の記事を読まれた方も沢山いらっしゃるかと思いますが、法務図書館に長く勤務されていて、ここに眠っていた2万点余の図書を、10年の歳月をかけてまとめられた。その背景には、図書館をよく知っている生き字引であった高山さんのバックグラウンドがあってのことだと思います。ボランタリーで一点一点の図書を吟味して目録化した、これは近代日本法曹史研究に大きな貢献をもたらすものであると書かれています。
この作業に当たっては、元宮内庁図書館勤務の藤井祥子さんの助力も大きかったと伝えられていますが、高山さんと藤井さん、二人の連携というかコラボレーションがあって、その目録に辿り着いたような感があります。
私は思うのですが、図書館員というのは在職中に培った知見、あるいはその技能は退職したという段階で切れてしまうのではなく、退職後もこのように形あるものとして成果を残すことができるのだと。生涯現役でありたいと願う我々を含めて、後進に大きな夢を与え、励ましてくださいました。
コメントはこれで終わりまして、緊急討議というプリントが入っておりますので、ご覧下さい。
図書館サポートフォーラムというのは、社会に対して図書館の意味を定見する活動というように言われています。今回の東日本大震災に際して、若手の図書館員たちを中心に被災支援をするために被災の情報を集約しようという動きが立ち上がりました。それは非常に早い動きで、震災の翌日にはすでにサイトが立ち上がっていました。最初はライブラリーから始まり、ミュージアム、アーカイブスと同じように被災状況を確認するといったサイトが立ち上がりました。そして今は、Kすなわち公民館も含めて、save MLAKという活動をしております。この活動を広く知っていただくために、緊急討議の場が4月23日、目白の学習院大学3号館203教室で開かれます。今、若い図書館員たちがどういう技能を持って、どういう問題意識で、どういう行動をこの局面において展開しようとしているのかということを知る貴重な機会になると思います。是非、ご参加いただければと思っております。
今回の大震災からの復旧、復興は、短期間で出来るものではないでしょう。単に図書館だけではなく、業務体制や命令系統など全体で、何とか文化財の復興をしていきたいと考えています。
そうした意味でも、この緊急討議の場が、四つの分野から文化財の復旧、あるいは東日本、東北、北関東に起こった悲惨な状況をリカバリーする、スターティング・ポイントになるのではないかと思っています。是非、こうした活動があるということも、広めていただきたくお話させていただきました。どうもご静聴ありがとうございました。