このたび、過分な評価を頂き、図書館サポートフォーラム賞を授けて頂けますことを有り難く、光栄に存じます。
事務局のお手を煩わせて皆様にお配りしてあります『評論』の「福田徳三の人となり」にも書いたことですが、福田徳三博士は明治・大正・昭和の初期には世に知られた経済学者・社会政策学者、大正デモクラシーのリーダーのひとりでしたが、今日ではほとんど忘れられております。けれども福田博士の学問や教育にたずさわる者としての情熱、人々の幸福を願い、福祉や厚生を目ざし、生存権など基本的人権を重んずる精神は、埋もれたままにしてよいものではないと存じます。
この書誌は、まだまだ未収録の文献もあり、ミスもありますので、忸怩たるものがありますが、福田研究をめざす研究者をはじめ、福田徳三とは何者と関心を持たれる方々のお役にたつことができましたら、利用者と資料を結びつける役割を持つライブラリアンとして、うれしく存じます。
福田博士は、図書館ひいきの方でした。自分の著作は必ず図書館に寄贈しました。
目録や索引の重要性も認識し、それを広めもしました。内外の大学の概要などの冊子も図書館に収集するように提言したり、関東大震災に際してはメンガー・ギールケ文庫という世界に貴重なコレクションを守ることを率先して行いました。また、図書館は耐震・耐火の建物でなければならないと提唱しました。
このように図書館大好きの福田博士にとって、ご自分についての書誌が、この図書館サポートフォーラム賞を受賞するという名誉なことを大いに喜んで下さるのではないかと、私はひそかに思っております。
また、私に福田徳三書誌の作成をお勧めしてくださった杉原四郎先生は、天野敬太郎先生に師事したこともありましたので、いつも図書館員に対して目をかけて下さいました。杉原先生は日本経済評論社から出版しました『日本の経済雑誌』ほかを対象に1989年第3回物集索引賞を受賞なさいました(この第3回物集索引賞では日外アソシエーツの大高社長も授賞なさいました)が、その授賞式に奥様のほかに、わざわざ私を同伴して下さいました。いま、私がこの図書館サポートフォーラム賞をいただけることを杉原先生がお知りになりましたら、杉原先生のことですから、ご自分の時のように喜んで下さったと存じます。
このほか、この書誌の作成にあたっては、いろいろ、多くの方のお世話になりました。
福田博士はドイツ留学から帰国後は教会に通うことはありませんでしたが、生涯聖書は欠かさず読んでおりました。その聖書の中のピリピ書に、「あなたがたのうちに働きかけて、その願いを起こさせ、かつ実現に至らせるのは神であって、それは神のよしとされるところだからである。」という箇所があります。皆さまへの感謝とともに、目には見えませんが、私をこのように導いて下さいました大いなる存在に言い尽くしません感謝をささげます。