高いところから恐縮ですが、表彰委員長を務めました中央大学の山崎でございます。
ただいま、末吉代表幹事から、趣旨について説明ありましたが、私の方からは、表彰の経緯と、祝意を申し上げたいと思います。
図書館サポートフォーラム賞は十回目を迎えました。社会的に影響力があって、かつユニークな活動を展開された、主として個人を表彰させていただくことで、図書館の社会的な認知度の向上、あるいは、皆さんのご労苦に報い、励ますという趣旨で行っております。
本年二月の二十一日に行われた選考会におきまして、いずれ劣らぬ9候補について選考を行わせて頂きました。激論を交わしましたが、その結果として、今日お見え頂いているお三方に図書館サポートフォーラム賞を差し上げることに決定いたしました。
お三方について、簡単に表彰理由を申し上げます。
皆様方には、表彰理由という一枚ものの紙とお三方についての資料がわたっていると思います。さすが資料の日外アソシエーツ、こういうものを全部つけてあるのがほかと違います。データ的に非常にしっかりした表彰だということをアピールしたいと思います。
お役目ですので、表彰理由を読ませていただきたいと思います。事実関係に間違いがありましたら、恐れ入りますが、あとで受賞の言葉のときに訂正いただければと思います。
では、最初は飯島朋子さん。
一橋大学図書館の司書として永年勤められ、その間、多くの意欲的な業務報告を発表される傍ら、ブロンテ姉妹やギャスケルの研究や文献目録に関する著作を多数発表された。これらは、いずれも多忙な業務の合間を縫ってものされたものである。その一方、図書館や図書館員が登場する映画を狩猟し、その調査結果を類型化して発表された。このことは、図書館を社会に認知させる上で大きな効果があったと考えられる。
とこれが表彰理由でございます。
図書館の仕事というものが、どんなにすばらしいものなのか、なかなか一般の人に知られない。それに対して、何か回答を与えるとすれば、図書館で働いている皆さんが、ご自身の仕事の中から得た知識や経験というものをいかにわかりやすく世の中に示すか、ということではないかと思います。
その意味で、飯島さんは、お仕事の中から書誌を作られる。あるいはお好きな部分があるのかもしれません。映画というものと図書館の関係について、とくにその映画の中で図書館がどこでどのように扱われたか、ということを幅広く映画を渉猟され、類型化する大変野心的なすばらしい試みもされる。こういうことは、一般の社会に図書館を親しみのあるものにするうえで、とても大きな力になるのではなかろうか、という風に思えます。
飯島さんのお仕事を拝見していると、私はかつて先輩から言われたことを思い出します。「仕事というものは、遊ぶような気持ちで仕事をして、遊ぶときは仕事をするような気持ちでしなさい」。これはどういう意味かというと、いい加減にやれ、という意味ではなく、常に遊び心をもって、余裕をもって、仕事をする。しかし、遊ぶときは遊びだからと中途半端にしない。一生懸命やらなければ、何だって面白くはならないんだ、とこういう話なんです。
私自身もなかなかその境地に至らないんです。仕事はいやだなと思いながらやるし、遊びになったら喜んでやる、とどうもよくないわけです。飯島さんはそういうところで、非常に素晴らしいプロダクトをおつくりになって、ご自身も周りも幸せになる。これはすばらしい、ということで、この賞を差し上げよう、ということになりました。
二番目は、佐藤正さん。
幹事の何人かはすでに佐藤さんのお店に行かれて、太鼓判を押されてるかもしれませんが、表彰理由を読ませていただきます。
大学で司書資格を取得され、都内の医学図書館、短大図書館で司書として永く勤務の後、コンピュータシステム会社に転じた。その後、「司書という職業の持つ意義を生かしたカフェを経営する」という年来の夢を実現させるために、会社を退職し、起業方法の研修、紅茶等食品提供に関する資格を取得した後、2006年4月に「ライブラリ・カフェ・ヴィッセン」を多摩市に開いた。カフェの心地よさ、ライブラリの情報提供機能、コミュニティとしての人の交流という3点の明確で魅力的なコンセプトの元で運営されている。
ということでございます。
図書館の魅力を、本当に身近な生活のなかで生かして頂いていることが、関心を惹きました。図書館というものが、特別な物ではなく、みんなの生活、衣食住の中で、それとごく近い距離で存在して、しかもそこで図書館の魅力というものが、おそらく衣食住の楽しさとうまく融合するんじゃないか、という夢を実現され、形にした、というのがすごいと思うんですね。
それと、もうひとつ感心したのが、司書は経営が下手、というのが相場で、自分はレファレンスの仕事するけどマネジメントはあんまりやりたくない、という方が多いんです。佐藤さんの場合は、そういう資格も勉強されたし、起業方法も一生懸命勉強されて、周到なご準備の上でカフェの経営をはじめられた。
そういう意味で、図書館員がどんなふうに起業しているのか、というひとつのモデルとして、受賞していただくのに値する、ということで、賞を差し上げることになりました。また、もしかしたら、見学会でお邪魔するかもしれません。その節はぜひよろしくお願いしたいと思っております。
三番目は、肥田美代子さん。有名な方です。私から強調することはございませんが、一応、読ませていただきます。
児童文学作家であり、1989年参議院議員に初当選以来、国会において「国際子ども図書館」の設立に尽力されるとともに、「子どもの読書活動推進法」「文字・活字文化振興法」を議員立法として実現させる運動の先頭に立ち、両法を成立させた。2007年10月、両法に基づく実際の推進機関として設立された「文字・活字文化推進機構」の理事長に就任し、読書文化や図書館の振興に力を尽くしている。
ということで、肥田さんは児童文学のエキスパートで、ご自身の経験から読書や図書館の大切さを訴えておられる。
そういうことを外部から見ていると、ご自身が身をもって、読書や図書館の大事さがおわかりになっている方だろうと思います。その経験からにじみでるもので、あるいは訴え、あるいは世の中を動かそうとなさっている、と思われるんです。
先ほど申しあげたように、確かに日本は情報資源について遅れております。図書館も数だけあって、利用のされ方やサービスについて、また認知度の点からみると、十分満足な段階ではない。
しかしながら、肥田さんはそのなかで、読書だとか図書館の重要性について、形ある法律とかあるいは組織をつくって、世の中に対して明確な力を伝えて頂いてきています。
そういう意味で、図書館員や情報専門家はもっともっと外部に、肥田さんを見習ってアピールすべきじゃないか、と思うわけです。
こういうふうなことで、日本というのは本当に文化国家なのか、図書館や法律が整備できていなくて、何が文化国家といえるんだろう、ということがあるとすれば、肥田さんは先頭に立ってそういう荒波と戦って図書館の重要性をアピールしてくださっている。これはぜひ表彰させていただこう、とそういうことになりました。
お三方に共通しているのは何か、と私なりに考えてみますと、図書館や本の魅力を社会に伝えていくことだと思います。それを伝える術、やり方は自らのご経験に基づいておやりになっていて、しかもそうした活動が徐々に世の中を変えていく、という確信をお持ちになっている、という気がするんです。
これはまさに、図書館サポートフォーラムの趣旨に合致する話でございます。お三方のやり方を見ていますと、いろいろなやり方で図書館の大事さが世の中に伝わっていく、それぞれ非常に違うタイプの仕事をなさって、そして同じような果実を結ぼうとされています。
今回の表彰は私たちにとっても、大変ありがたいということを報告申し上げ、お三方の表彰に対しておめでとうございます、と申し上げて、私の報告といたします。どうもありがとうございました。
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