第 3 号 2006年7月1日発行 発行人 末吉哲郎 発行所 図書館サポートフォーラム |
目 次
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《巻頭特集》 第8回 図書館サポートフォーラム賞受賞式【末吉哲郎 代表幹事】 【井上如 表彰委員長】 【受賞者/松岡享子氏】 【受賞者/近江哲史氏】 【受賞者/高橋晴子氏】 |
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俳句八吟山内 明子貝焼きのふつふつ艶話佳境 夕蛙さてどののれんくぐらうか 昼寝覚この世の電話鳴りにけり まな板の干されて銀座夏めけり 墓洗ふ夫の知らざる婆となり てやんでえ松茸なんぞてやんでえ ちょんの間のこの世なりけり春を待つ おでん酒馬券を拝む男かな |
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高原のかわいい図書室―遙かなる須坂・峰の原―恵光院 白 長野県、菅平はラクビーなど、高原スポーツのメッカである。春秋のハイキング、夏にはテニスやサッカーのチーム、クラブの合宿(大学や全日本なども)、冬のスキー等々。近年は400mの正規トラックを持つ高地トレーニング用の陸上競技グランドや、クロスカントリー・コースも整備されいる。かつて早大ラクビー部の考案した攻撃法、“菅平(カンペイ)”は、この地で開発されたと聞く。スポーツに励む人達の練習風景は見ているだけでも楽しい。むろん地元特産の高原野菜も美味しく、近辺には宿泊施設も色々ある。 (注一)堀直格 信濃国・須坂藩、第十一代藩主、在位一八二一〜一八四五年。国学者・黒川春村を召して『扶桑名画伝』、他を編じ、塙保己一後の和学講談所とも交流があり、蔵書家としても聞こえた。平成の現在、国立国会図書館、国立公文書館、東京国立博物館資料館、宮内庁書陵部などに、彼の旧蔵書「花迺家文庫」(ハナノヤ・ブンコ)の一部が収蔵されている。因みに二〇〇六年春、右の国立公文書館で開催された《大名―著書と文化・》展には、堀直格公もその著編とともに紹介されていた。参考ながら、須坂市に隣接する小布施町(オブセマチ)の著名文化人、高井鴻山も同一世代で、共に今年生誕二〇〇年である。 |
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近江哲史著『図書館にいってくるよ』植村 達男 図書館員が、本書の目次を開くとギョッとするだろう。なぜなら、冒頭の第一章は「ひまつぶしに出掛ける」というタイトルだ。この本の著者は、「ひまつぶし」のために図書館を利用している。図書館はそもそも教育のための施設。「ひまつぶし」のために利用するなんて、怪しからん。そんな意見もでてこよう。しかし、現実を直視してみよう。平日の昼間の図書館。そこには退職者と思われる五十歳代から七、八十歳代までの男性の姿を数多く見かける。株式投資のためか、または会社員時代からの惰性か、日本経済新聞や日刊工業新聞を丹念に読む人。ダイヤモンドや週刊東洋経済をひざの上に置いたまま居眠りをする人。中には辞書や参考書を広げて、細かい字で執筆中。そんな姿をチラホラとみかける。印刷・出版される当てもない「自分史の原稿」をひたすら書き綴っているかにみえる高齢者もいた。これらの人々を総称して「ひまつぶし」の目的で図書館に来ている人々。そういっても差し支えないだろう。 「ひまつぶし」に少々紙幅をとりすぎた。本書の著者近江哲史氏は退職した元サラリーマン、基本的には真面目な人物。調べ物をするために図書館を利用している実践家だ(第二章)。イギリスに旅行した後で、湖水地方のいわれやそこに住んだ文学者たちの跡を追い文献を探す。一九世紀イギリスの詩人・画家ラスキンについて調べた。また、満州で過ごした子供時代を回想し「満州国国歌」の歌詞を見つけるために努力を重ねる。チャント図書館の本来の活用法も身につけている。また、第五章では図書館でのイベントを紹介する。著者は、近所の千葉県流山市の市立図書館で、ボランティア団体のメンバーとして映画会を開いたりもする。この会では、往年の名作「カサブランカ」、「エデンの東」の上映を行った。単に図書館を暇つぶしの場と考えているわけではない。このあたりを読むと、図書館関係者は「ホットする」に違いない。 以上のように本書は定年退職者を対象とした「図書館利用マニュアル」といった性格の本。しかし、マニュアルでありながら、「読み物」という編集態度に徹している。巻末には丁寧な索引がある。この索引の中から、アメリカの図書館、郷土史、自分史図書館、電子図書館等々気になる事項が出てくるページをめくってみる。そんな利用法もあろう。本書を購入するのは決して「ひまつぶし」に図書館を利用する高齢者のみではないだろう。 ※本稿は「週刊読書人」に寄稿した原稿をもとに、若干の加除修正を行ったものです。私は、近江さんの著書が出版された当時、「この本は、一部の図書館関係者の反感を買うものではないか」との危惧を持っていました。そのことが、以下の文章の冒頭部分にあらわれています。私の危惧は吹き飛び、旧知の近江さんのユニークな著書が、図書館サポートフォーラム賞を受賞されました。本当によかったと思います。(2003年、日外アソシエーツ、1900円+税) |
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ベルナール・フランク氏と小林宏氏、そして日仏図書館情報学会岡田 恵子読者の皆様の中にはこの表題の固有名詞をご覧になって、誰? 何この学会? と思われる方も多いことでしょう。あるいは、ベルナール・フランクはパリのギメ博物館の収蔵庫で、法隆寺の阿弥陀三尊の勢至菩薩を発見した人物(*注)として新聞で見たことがあるけれど、不可思議な図書館団体らしきものとどう結びつくの? と。驚くなかれ、右の団体には、この図書館サポート・フォーラムのメンバーの、十人近くが会員(元会員を含めて)になっている。この学会員で図書館サポート・フォーラム賞を受賞された方も、すでに四人を数える。また、三名はフランス政府から勲章を授かっている。 パリ日本文化会館図書館発行の「図書館ニュースレター」(二〇〇三年特別号)の巻頭に、故フランク氏のポートレートとフランスの元大蔵大臣であった、クリスチャン・ソテール氏の「ベルナール・フランクの想いで」が載っている。ソテール氏の文章は見事であり、フランク氏のお人柄をあますことなく書き綴っている。 考えてみれば、フランク氏がお亡くなりになられたのが一九九六年、六九歳であった。ということは、小林氏が八〇歳であったから、ほぼ同じ年齢、あのいまわしい第二次世界大戦中に、洋の東西で青春時代を過ごし、辛酸をなめて時代をくぐりぬけてきたお二人だったのである。ここで両氏を偲び、今年も私たちに贈り物を残されているふたつの記念すべきトピックスを紹介することで、この一文をしめくくらせていただくことにする。 ◆小林宏著「図書館の秋・雨だれの歌」 編集代表 波多野宏之 (*注) 「ギメ美術館で発見された法隆寺の仏像」に関しては、インターネットの検索エンジン(ヤフーなど)で、”フランク ベルナール 法隆寺”のキーワードで検索するか、http://www.photo-make.co.jp/hm_2/ma_20_4.html を参照ください。 |
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声高らかに図書館行進曲!近江 哲史 図書館の活性化を進めるためには、図書館行進曲も必要であろう。因みに「行進曲」というだけのキーワードでインターネットを検索すると、グーグルで約十七万八千件もあった。私にとってマーチといえば、まず軍艦行進曲だ。「守るも攻めるもくろがねの……」と口ずさめば即、身体が躍りださんばかりである。でもそんなことを言っていると年令が分かってしまう。そこでヴェルディ作曲、「アイーダ」の「凱旋行進曲」や、ワーグナーのローエングリン前奏曲「結婚行進曲」などもいいではないか、とも言っておこう。 一 今日は雨降る シトシトと 二 気を取り直し 読書をと 三 そうだあのこと 確かめよう 四 人に会うにも 図書館で B面はちょっと作詞に時間がかかった。私が図書館員でないからであろう。さっきは利用者側からの話であったが、今度は図書館司書の方から見るのである。でも意向を慮って書いてみたら、こういうモノに仕上った。ご批判を仰ぎたい。 一 幾十万の 資料あり 二 何か分からぬ ことあらば 三 限られたるは 資料代 四 押し寄せ来るは 児童室 というわけだが、お粗末の限りと言われそうだ。ちなみにこれを軍艦行進曲の韻律で歌ってみたが、さっぱりサマにはならなかった。これはいかん。新譜がほしい。それにしても「図書館行進曲」なんて需要はあるだろうか。 |
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春 晝大谷 明史 窓外には緑が若い。 ―さう、「一個の人間としての自分と、廣大な宇宙との間に圖書館が在る」と言ひますよね。それをもう少し親切にほぐすと、かう言ふ事ですかな。 * * * 機械音の響きで目が覚めた。電子レンジの音である。此処は自宅だ。家人は出掛けている。レンジの蓋を開けると茶碗が湯気を立てている。朝食時に淹れた珈琲の残りを温め直している内に眠ったらしい。道理で何処かの喫茶室にいる夢を見ていたようだ。取り出した茶碗をテーブルに置く。――待てよ、この状況も又、夢の中か・・・・・ |
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ライブラリー・ツーリズム―観光資源としての図書館―戸田 光昭 図書館の役割は多様化している。私が先に、『フォーラム』第二号で英国のクロイドン図書館の事例に触れたように、図書館先進国である英国では、メディアの多様化にも対応した図書館活動が展開されている。そこで、日本でも図書館発展のために、広い視野で図書館の役割を考え、実行していく必要があると思う。その一つとして、今回はライブラリー・ツーリズムを取り上げることにした。 これら図書館の具体例を本書ならびに日本の事例も入れて挙げてみると、次の通りである。 (参考文献)Public libraries: travel treasures of the West / Mary and Anna Rabkin. Golden, Colorado, North American Press, 1994. 332p. |
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赤れんが棟を歩く高山京子/神野 潔 赤れんが棟を歩く(1) (PDFファイル246KB) |
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チョットだけよ井上 如認知症、あるいは最近特に四〇歳代から六〇歳代にかけての若年認知症が深刻な社会問題となる中で、歳をとらずに長生きする方法を自分であれこれ実験してきた。その結果、秘訣は三つあることが判った。いまさら手遅れとは思いつつも、今日は、日ごろのご厚情に報いるため、LSFの皆さんにその一端をこっそり伝授することにする。もちろん他言は無用に願いたい。三つの秘訣、いわばベストスリーの第一は○○○、第二に○○○、第三は“世の中をまるごと笑い飛ばす”ことである。この第三の秘訣の初歩的な例としてたとえば次がある。 エー、さてLSFの皆さん、世の中十人十色とか申します。人はそれぞれみんな顔が違うように、性格はもとより、体格、神経、内臓、みんな違います。ひとつLSFの幹事諸侯を例に挙げましょう。ひとりひとりが他の幹事とは違う特徴をそれぞれ備えています。ただ違いを見抜く眼力のない者にはそれがわからない。そこでその眼力を身につけるために、今日はまず易しい練習問題を解いてみましょう。 問題: 例:段違いの(2) 桁違いの(2) 「違い方」十五種類 いかがでしたか。下線部分が短い場合はいくらでも長くしてください。現行幹事の約半数は心得違いだという事実を正しく指摘したければその幹事諸侯の番号をすべて「心得違いの_____」の下線上に記入すればいいのです。 |
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ライブラリアンは宗教家?末吉 哲郎 東京国立近代美術館の琳派・RIMPA展に感銘を受けた丸谷才一氏が、これを企画・実行した学芸員を評して、第一に美術史学者、第二に美術評論家、第三にコレクター、第四にジャーナリスト、第五に興行師としての資格を兼ね備えたやりがいのある職業として絶賛している。(朝日新聞〇五・一二・〇六) |
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後記
「ふぉーらむ」第3号をお届けします。 創刊号(2004年11月)28頁。第2号(2005年6月)64頁となり、第3号は72頁とすくすく若葉をもやし成長しています。 第8回サポートフォーラム賞授賞式に於ける井上如委員長の講評は圧巻です。ぜひ、委員長独特のシニカル・スパイスを味わってみて下さい。 会員交流誌としては、体裁などを含めまだまだ模索しているところですが、今号よりも次号がさらによい冊子となるよう、皆様のご投稿をよろしくお願いします。 (森本) 「赤れんが棟を歩く」(高山京子氏・神野潔氏 著)は『刑政』116巻(9〜11号)に掲載されたものを転載しました。数年前のLSFでも見学に赴きましたが、丸の内散歩の1コースとして見学されることをおすすめします。 |
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